キュウリの萎凋症状の傾向と対策
※萎(しおれて)凋(しぼむ)病気という意味です!
新聞の影響力はたいしたものですね。6月10日の長崎新聞に市川種苗店のベランダ菜園についての記事が載ったのですが、二日しかたってないのに、連日質問の電話がかかってきてます。その中の一つをご紹介します。
表題は対馬の方からの質問でした。状況を確認するため、こちらから逆質問しました。
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つる割れ病に感染したキュウリ ※引用元は下記↓
(元気だった株が晴れた日になると急に萎れだす!)
【質問】
Q1枯れたとの事ですが、接木苗ですか?実生苗ですか?
A1実生(カボチャに接木していない)苗です。
Q2露地ですか、ハウスなどの雨よけ栽培ですか?
A2露地です
Q3どのような枯れ方ですか?
A3茎や葉は緑色で元気だったのが、一日に一本、二日に一本という具合に(急激に)枯れる。夜や曇りや雨の日には元気だったのに、晴天になると急に枯れてしまう。
Q4茎葉に枯れている部分はないですか?
A4茎葉は緑色で元気ですが、急にしおれるので困っています。
Q5元肥はどうですか?
A5堆肥、鶏糞、配合肥料、タップリ入れてます。
Q6畝は高いですか
A6畝は上げていません。
Q7敷きワラはしていますか?
A7厚く敷きつめています。湿りがあるくらいです。
Q8実がなるのが楽しみですよね?
A8毎日、キュウリを眺めてます。それが楽しみです。
【診断】
ほぼ想像がつきました。その病気は「つる割れ病」といいます。
キュウリで全体が萎れる可能性のある病気は
①立枯病
②立枯性の疫病
③つる割れ病
④つる枯れ病
⑤それ以外の原因 です。
①立枯病は主に、苗のとき発生しやすく、パタパタと全滅する時が多いです。株元の地際部にくびれが現れます。くびれや融けたような傷みがある場合は可能性はあります。
④「つる割れ」と「つる枯れ」と、似た名前ですが、A3~4が決めてです。つる枯れはつる割れほど急性ではないし、病班が茎などに現れてないようなので「つる割れ」だろうと思います。特に、A1で接木苗ではないので、つる割れ病の可能性が高いです。
線虫や、ウリハムシやアブラムシの根への寄生など様々な要因が考えられる⑤ですが、根を見ないと判断できないので、今回は除外して考えます。
②の疫病による急性萎凋病も考えられますが、多くは、営利ハウスの高温過湿条件で発生します。連作障害を回避するため接木栽培をしても発生します。今回は露地実生栽培なので、可能性は薄いでしょう。
したがって、限りなく③「つる割れ病」くさい!と、判断しました。しかし病名を特定することだけが大切なことではありません。何が原因で、どうしたら防げるかを知ることの法がより有意義です。
【発生のメカニズムと対策】
連作すると発生しやすい連作障害の一因となります。露地より施設栽培で発生しやすいのが一般的ですが、露地でも根からの病原の進入があれば容易に発病します。
フザリウムという菌が原因です。同じウリ科でも種類が違うと発生の原因となる菌は異なるという特徴があります。
が何らかの原因で根に傷が入るとそこから菌が水を吸い上げる導管に進入し繁殖します。根の機能を殺し水を吸い上げること困難にします。だから、A4のように元気だった株でも晴天時に急激に萎れてしまうのです。トマトの青枯病なども呼び名は違いますが、全く同じ症状で急激に萎れます。(この場合はフザリウム菌ではなく細菌が病原です!)
菌が根に進入したのが最大の原因です。ハウス栽培などで多発するのは、雨水が浸透しないのでミネラルバランスが崩れ、その上微生物バランスも崩れ、有害な(根に傷を付け侵入するから!)線虫が発生しやすいのがその理由と考えられています。
しかし、露地でも、菌はそこら中にいます。連作をしてもしなくても、他所から運ばれてきたり、雨水により流れ着いたりします。またいろいろな資材にくっ付いて越年した菌が原因となることも多いので、露地栽培の処女地でも発生する可能性は十分にあります。
つまり、
①肥料が多いので、軟弱化し菌の進入がし易かった!
元肥と追肥を分けて成長似合わせて窒素を効かせるのがコツです!
②畝が上げてなく通路にまで根が張っていたこと。さらに、毎日、人が株の近くに来るので、地表付近の菌の多い部分の根に傷がつき易かった!
この根の傷から、フザリウム菌が進入したと思われます。今回のポイントです!
最低でも20~25cmの高さの畝を上げて栽培するようにしてみてください。また、「雨後、通路がぬれている時は野菜に近づくな!」といいます。愛情が仇になって野菜の根に傷をつけ、雑菌の進入を助長することになっているということに気づいてください!
③敷きワラによる保水効果は、非常によいことなのですが、株元が加湿になるほど厚いワラは非常に逆効果となります。株元は乾かさねばなりません。
株元を中心に15cm位ワラを除去して土面が露出するようにしましょう。急激な過湿過乾はこの病気を助長します。この意味では黒マルチなどのほうがよかったかもしれません。
④かかったら治らない病気です。残酷ですが、手の施しようもありません。萎れという症状は人間で言う脳梗塞みたいなものです。大事な部分に血流が行き渡らないわけですから死を待つしかないのです。結果的には症状が出た株は抜き取るしかありません。周囲に病原が拡散しないように、キャプタン剤の800倍駅を500cc~1L/㎡位、灌注するのが正攻法です。(末期的には効果がなく全滅する可能性もあります。それほど怖い病気です!)
⑤全体の急激な萎れは根からの菌の侵入が直接の原因なので、進入を許さない根=接木苗を使うことにより、ほぼ予防できます。
ただし、「つる枯れ」や「立枯性疫病」などはたとえ接木しても発病する可能性はありますので安心は出来ません。
【キュウリの「つる割れ」と「つる枯れ」との違い】
例によってタキイの野菜病害の診断技術(絶版)より写真を引用してみます。
◆つる割れ病の症状
発病が進むとスジ状に変色 表面には白~淡桃色のカビが発生
導管が褐色に変色、根はひげ根が枯死している
激発、多発時 茎の部分にまで白~淡桃色のカビが発生
ツル枯れは淡桃色にはならない!
◆つる枯れ病の症状
表皮から徐々に進行するので、萎れが遅い!
末期には病斑上に黒点が散らばったように現れる
地際はもちろん、節部に発生する 患部以上が枯死する
茎に亀裂が走る
つる割れ病は「接木苗」で容易に予防できます!可能性の高い畑では実生苗ではなくできるだけ接木苗を使うようにしましょう!