胡瓜・なす・トマトが枯れちゃった!なぜ?

キュウリ、トマト、ナスが急に枯れたのはなぜ? 原因と対策は?
雨の後、畑が湿っているときは野菜に近づかないこと!

 

7月に入りました。梅雨明けにありがちな集中豪雨の危険性も考えられしばらくは気が抜けませんね。

さて、昨晩のことです。明日収穫しようと思っていたスイカがイノシシの被害で全滅してしまったとお客様からメールをいただきました。長い時間をかけ、丹精込めて作り上げた収穫直前の哀れな惨状を何度も見たことがありますが、言葉もありません。さぞ、無念であられたことでしょう。イノシシ以外も、アナグマ、ハクビシン、それにカラスなど。ちょっと油断すると、今まで頑張って栽培してきた成果が無残に食い荒らされてしまいます。

ちょうど夏野菜の収穫最盛期に入ろうとしております。釈迦に説法でしょうが、皆様も、天候の急変、小動物の被害には充分に対策をとっておかれますように。

 

さて、数日来ブログの解析データを見てみると、「キュウリが枯れた!」で検索してこのブログをごらんになる方がとても多いようです。最近はキュウリ以外にも、ナス、トマトなど、写真を撮ってこられてなぜ枯れたのだろうか?と、店頭で質問を受ける機会が急増しております。

そのようなわけで、なぜ枯れるのか、原因と対策を再度!考えてみようと思いました。


◆キュウリ
※昨年のブログですがこちらをごらんください。

20120612_%e3%82%ad%e3%83%a5%e3%82%a6%e3%83%aa_%e3%81%a4%e3%82%8b%e5%89%b2%e3%82%8c%e7%97%85_%e5%9c%b0%e4%b8%8a%e9%83%a8%e9%bb%84%e5%a4%89

↑キュウリのツル割れ病です。

この時期(梅雨時)に多発します。キュウリ以外にも、スイカ、メロンなどで良く発生します。ツル割れ病以外にもツル枯れびょう、立ち枯れ病、立ち枯れ性疫病など、枯れてしまうと同じような症状に見える病気がありますが(詳しくは昨年のブログを見て下さい ) 、6~7月、数日前まで元気だったのが急に萎れる例のほとんどがこのツル割れ病です。

 

原因は土の中にいる病原菌が、何かの原因で根の傷から進入し発病することが原因です。
根から体中に水分を吸い上げる導管にこの菌が繁殖し、人間でいう脳梗塞状態になり水分の循環がストップしてしまうことで、結果的に萎れてしまうのです。

 

①ウリ類の連作をしない!土の中の菌をできるだけ少なくするためです。
さらに、
②栽培した後の葉・茎・根の残渣を土の中にスキ込まない!植物残渣を土に戻す菌が結果的に連作障害を引き起こします。私は若いとき徹底的にこのことをたたき込まれた経験があります。

②接木苗を使う!同じウリ類でもカボチャなどは感染しません。カボチャに接木したキュウリの苗を使うことで予防できます。接木しない実生苗ではツル割れ病の病原菌の根からの進入を防げないのです。
枯れてしまって、後の祭りかもしれませんが来年のためにご記憶下さい。

③菌が増えてくるのは、高温多湿条件下です。つまり、露地栽培では梅雨時がもっとも危険南敷です。この時期は注意を集中しなければなりません。

④根を傷つけない!土の中にどれほど菌がいても、根の中に進入することができなければ発病しません。風や害虫の食害痕なども考えられますが、悪玉線虫が根をかじることが大きな原因の一つです。連作や未熟有機物の投入などで土の土着菌のバランスが崩れることが悪玉線虫を増やすことにつながりますので注意が必要です。

⑤露地のキュウリでは、雨の後キュウリの株周りに近づかないこと。 畝を高く上げて水はけを良くしておくことも大切です。でも、梅雨はどうしても畑が乾きません。水分が多くなると土の中の酸素が減ってきます。酸素が減ると呼吸しづらくなるので、空気を求めて地表近くに根系が移ってきます。マルチ栽培など、マルチをはぐってみると地表が真っ白くなるほど根が張っているのが分かります。
もし、この根を足で踏みつければどうなるでしょう。線虫のかじり傷程度では済みませね。人間でいえば大けがです。しかも水分が多い所だと、泥水にうじゃうじゃ繁殖している病原菌がその傷から一斉に体の中に入り込んでしまう結果となります。

意外に知られていませんがキュウリのツル割れ、トマトやナスの青枯れなど急激に枯れてしまう症状の原因は愛情をいっぱいの人間の行為も一因であることを忘れてはいけません。つまり、収穫や誘因・摘芯・摘葉などの管理作業はもとより、「どんな具合かな?」という毎日の観察行為(笑)さえも、雨の直後のキュウリにとっては大迷惑なのです。


◆トマトやナスやピーマン~なす科野菜の場合

20130702_%e3%83%88%e3%83%9e%e3%83%88_%e9%9d%92%e6%9e%af%e7%97%85

トマトの青枯れ病
急激に枯れがくる点がキュウリのツル割れ病に似ていますが、キュウリはフザリウム菌でこちらは細菌病です。菌ではなく細菌ですから基本的に発病したら直せる有効な薬はありません。枯れるメカニズムはキュウリのツル割れ病と全く同じです。写真のように茎の断面から脳血栓の血栓に対応する暗灰色乳液状の液体がにじみ出るのが特徴です。
病斑が出ないまま=青いうちに、サーッと枯れるので青枯れです。
発病したら直りません。発病株を抜くしかない怖い病気です。
対策はキュウリのツル割れ病対策と全く同じで良いと思います。

とくに、連作をしないこと。接木苗を使うこと。雨の直後にトマトに近づかないことを励行して下さい。

20130702_%e3%83%88%e3%83%9e%e3%83%88_%e3%83%8a%e3%83%b3%e3%83%97%e7%97%85

トマトのナンプ病
こちらも細菌病です。青枯れほど急性ではありませんが、銅剤くらいしか有効薬剤がありません。傷から細菌が侵入して発病します。特に芽カキの傷から発病したりします。特に肥料が効いているとき、雨の後の管理作業などには注意が必要です。かいよう病との違いは臭いにおいが発生します。でも枯れ出したら抜くしかありません。

20130702_%e3%83%88%e3%83%9e%e3%83%88_%e3%81%8b%e3%81%84%e3%82%88%e3%81%86%e7%97%85

トマトのかいよう病
トマトのナンプ病とほぼ同じで、露地栽培の場合、梅雨期に発病が多いです。
菌は土に残り土壌伝染します。しかし、ナンプ病と同じく茎からも進入するので
多肥栽培や、多湿条件での管理作業には十分ご注意を。

20130702_%e3%83%8a%e3%82%b9_%e9%9d%92%e6%9e%af%e7%97%85

ナスの青枯れ病
トマトと全く同じ、急性の萎れが特徴です。この時期、お客様から「枯れた!」と訴えられる症状のほとんどが青枯れ病だと思っています。傾向と対策はトマトと全く同じです。

連作をしないこと。接木苗を使うこと。雨の直後にナスに近づかないことを励行して下さい。

20130702_%e3%83%8a%e3%82%b9_%e5%8d%8a%e8%ba%ab%e8%90%8e%e5%87%8b%e7%97%85

ナスの半身萎凋病

20130702_%e3%83%8a%e3%82%b9_%e5%8d%8a%e6%9e%af%e7%97%85

ナスの半枯れ病
半身萎凋病と半枯れ病はよく似てます。急性はない点。半分に症状が出る点がにています。
接木苗でも発生することがある土壌伝染性の病気です。
連作を避け、雨の後にはナスに近寄らないのが賢明です。


 

トマトやナスなど、ナス科野菜ではこれら以外にも、ウィルス病やコルキールトなど全身が枯れてしまう怖い病気がありますが、露地栽培でこの梅雨時期に問題になる病気は今までに述べた病気たちだと思われて大丈夫だと思います。

家庭菜園では、これらの「全身が枯れ込む病気」はかかったら抜くしかない。手の施しようがない、と、覚悟するしかありません。つまり、現在の栽培技術では予防対策しか効果的な方法がないと考えた方がよいと思います。

接木苗を使えばかなりリスクを小さくできることは間違いありませんが、極論すれば、接木苗だからと言って安心してはいけません。もう一度おさらいすると。

 

まず、接木苗の力を充分に発揮させるために以下の三条件を守るようにして下さい。
①絶対に自根を出させないようにするために、接木面が地上に出るように浅く植えておかねばなりません。

土壌病害のバリアーとなりうる台木でも水に浸かりっぱなしで酸欠状況にあればバリアー機能が失われます。高畝にし、水はけをはかることがポイントです。

③地際は特に乾燥させておかなければなりません。敷きワラを株元に敷き詰めていたり、敷きワラが古くなったりしたら、敷きワラから病原が感染します。マルチ栽培でも株元は露出するくらい高く風通し良くしておかなければこの地際部から病気が入ります。
次に、全身の枯れ=萎凋を発生させる病気の対策の基本はつぎのとおりです。

①土着菌の活力を失わせないようにするために、微生物バランスを崩さないようにし、特に悪玉線虫を増やさないようにすることです。そのためには、なす科ウリ科(カボチャなど例外を除いて)とも、連作は絶対に避けてください。期間は数年必要です。

②雨が多い時期は病原菌の天国です。雨の後植物に近寄らず、極力、根に傷を付けないように配慮することです。肥料が多めに効いているとやはり体に菌が入りやすくなります。曇天や雨天が続くときは軟弱なるような多肥栽培は厳禁です。

 

※自分で映した病気の写真がなかったので、写真はタキイ種苗の「野菜病害の診断技術」から引用させていただきました。