どのくらいの種が必要か?どんな品種が良いか?

台風や地震の災禍に見舞われた皆様衷心よりお見舞い申し上げます

さて、今回は岡山県のA.M.様からのご質問をとりあげてみたいと思います。
**********************************************************
> これから、4000株~5000株ほど出荷用の白菜を作る予定ですが、
> どれぐらい種が必要になってきますでしょうか?
> 白菜は、大量に作るのが初めてなので種の量がどれぐらい必要なのか教えていただければ助かります。
**********************************************************

高価な種を購入するとき、品種の選択と同じくらい悩むのが、どのくらい種子を購入し準備しておくかという問題です。家庭菜園ではそれほど重要ではないかもしれませんが、営利農家にとっては大切な問題です。種子は生ものです。時間とともに発芽勢は低下します。冷蔵庫があるじゃないかという声が聞こえてきそうですが、農家レベルでは湿度や温度の変化を完全に一定に保てるわけでは無いので品質の劣化をゼロにすることはできませんS。基本は使い切ることです。
ただ、天候の変動や品種の個性の差があるので、ある程度余裕を見ておかねばなりません。また、人気品種は早めに購入しておかないと当用では売り切れてしまうので早めに準備しておかなければいけません。
この様な諸事情により予め論理的に計算し、早めに種子を準備されておくことをお勧めしております。

実は、播種量は一概にこれだけあれば必要十分であると断定できないのが歯がゆい点ではあります。ただ、5000株ほどの白菜を考えるとき、標準的には株間45cm位で約3000株/10aなので畑の面積は15aほど必要だということは押さえておいてください。

もし100%の発芽率で1株当たり1粒で良い場合は5000粒であればよいのでしょうがなかなかそうはいかないことはご存知の通りです。
まずは耕種基準一覧をご覧ください。※タキイ種苗のカタログに掲載されていたものを参考にして私が一部書き換えたものです。
これによると、10aあたり、30~40ml/育苗となっておりますので、15aだと、45~60mlほど必要と読み取れます。20mlあたりの粒数3500~5000だとすると、7800~15000粒位の種を蒔きなさいと言っております。
発芽率はほとんど90%位はありますので、健苗率をどのくらい見るか=つまり、途中で枯れたり、虫で芯が無くなったり、奇形株になったりするのを除けばどのくらいのよい苗ができるかという問題に帰着しますが、本音を言えば経験によって決まるところが多いようです。

だから、最小値で考えてみましょう。

まずは育苗して定植する場合で考えてみましょう。
発芽率×健苗率(90%と仮定します)=0.9×0.9=8割。
1株1粒のセル育苗なら、5000÷0.8=6250
20ml=約3500として35ml必要となります。

一方直播するとして一株三粒落としだとすると
5000×3=15000、発芽率と健苗率は直播の場合関係ないので
15000÷3500×20=85ml必要となります。
一株二粒蒔きなら、2/3ですから56mlでよいという計算になります。
8月下旬~9月上旬の虫が多いときは育苗定植が望ましいと考えますが、気温が下がって虫の害が減ってくるにつれ、白菜本来のまき方である直播をお勧めします。この場合、台風等不測の事態に備え1~2割程度の補植苗を作っておくと完璧です。上記で述べた播種計画は私が若いときタキイ農場にいた時に学んだものです。そうするのが理想であるといっても他の考え方に沿った方が良い場合もあるかもしれません。あくまでご参考までにとどめてください。

結論です。最初に述べたように35ml~56ml~85mlとかなり幅があることがお分かりいただけたでしょうか。

 

 

次は品種の選択についてです。
独断と偏見が入っております点はご容赦ください。

**********************************************************
> 色々種類を作ってみるのがいいのか
> 1~2種類を中心に栽培したらいいのか
> この点についてもアドバイスいただければと思っております。

> 追伸:出荷先は、JA(農協)関係ではなく個人でスーパーなどで販売しているバイヤーさん向けです。
**********************************************************

収穫時期の幅があります。10月下旬~2月くらいですね。同じ品種でこれをまかなうことはちょっと無理がありそうです。少なくとも、早生系と冬どり系を分ける必要があるでしょう。

また買う人の好みが全く違います。大きさや重量を重視するか否か、芯の色を気にするか否か、葉の柔らかさを重視するのか否か、等です。
一方消費者目線で考えると、「美味しい」のが一番ですが、生産者にとっては作りやすくてコストがかからずしかも中間バイヤーや消費者が好むものを作らなければならないでしょう。
※消費者目線と生産者目線というのは品種を考えるときとても大切な視点です。人参について突っ込んで考えてみましたので、こちらも参考にしていただければ幸いです。

 

当店で発売している白菜で一番おいしくて古くからのお客様に好まれているのは野崎系で間違いありませんが、佐世保という特殊性もあります。
一方漬物加工用に用いられている白菜は黄芯系がほとんです。
キムチなどは固めが良いので冬越白菜など晩生系が最適です。
もし、蒔き時を失した場合などは、聖徳、あごおち75、日本一遅く蒔ける白菜などを使わないと結球してくれません。
岡山県のA.M.様のご質問に対しお答えした回答は以下の通りです。
播種量や品種は、上記の情報などをご参考の上、ご自身で目的を絞って決断されるのが最良の方法だろうと思います。