ベト病に強い玉葱の品種は? 晩生の玉葱は腐らない??

最近、同じ内容の質問をしばしば受けますので今回はまとめて考えてみました。

 

まずは、ベト病
よろしかったら、最近書きましたこちらの記事の後半 をぜひお読みいただけたら幸です。
◆ベト病は低温、多湿、少日照、そして窒素過多などによる軟弱状態で発生しやすいです
真夏はほとんど発生することはなく、夏から冬、そして冬から春へ移り変わる時、停滞前線などの影響でカラッとしない天気が続くと発生しやすくなります。当然秋彼岸から春彼岸までは日照量は激減しますので玉葱の栽培期間中はいつでも要注意と言うことになります。さらに、肥料が多すぎて茎葉が柔らかくなっている場合はベト病菌が容易に表皮に侵入しやすく菌糸を伸ばしやすくなるから特にマズイです。
このようにベト病は、その発生を天候や畑の排水状態や畝の形状、施肥量によって予測できますので早めに対策(排水強化、窒素抑制、そして最終的には殺菌剤の散布など)を講じることが最も大切になります。そして耐病性品種に頼ろうとするのは感心しません(その理由は後述します)。

 

玉葱の場合は葉が大きくなっている2月以降にベト病の(黒っぽいスス状の)胞子を目にすることが多いのですが(この胞子を分生胞子といいます)、10月頃苗床で発生していた一時発生源(卵胞子)の生き残りが二次的に再発生したものです。だから、ベト病対策で重要なのは二時発生した分生胞子より、一時発生源となる卵胞子を苗床に持ち込まない様にすることが最も大切です。この辺は先に引用したブログの後半 に詳しく書きました。

 

そして、多湿、排水不良は玉葱にとって致命的です。玉葱は元々吊り玉にして腐らない性質を持っている様に、生来乾燥にはとても強いのですが、過剰な水分に非常に弱い野菜です。そしてこれが今年の玉葱に大きな打撃を与えた張本人なのです。

 

佐賀県白石地区は有名な玉葱の産地ですが、今年は主にベト病などが原因で壊滅状態でした。
スーパーアップ玉葱の育種元の専務さんに佐賀県の詳しいベト病事情をお知らせいただきましたので、引用させていただきます。赤尾専務、いつも、ありがとうございます。

「長 年、農業用水に井戸水を使っていたそうです。しかし、元々土地が低いところで、地盤沈下の問題が年々深刻化してきたため、5年程前からダムの水を利用する ようになったそうです。その結果、地下水位が上がって排水が悪くなり、病気が多発するようになったのでは、、、と言われていました。白石地区でべと病の問 題が取り上げられはじめた時期などを考えると、それも原因の一つだと言えそうです。」
また、
「病気の発生した圃場で使った機械や道具を別 の圃場で使用して広がるという事があります。圃場に入らなくてもいいように、ドローンを利用した消毒を検討されているようです。また、一軒あたりの面積が 広いため消毒に何日もかかり、その間に病気が広がってしまうという事もあるそうです。」
田んぼの裏作ではなく、また連作圃場でなければ白石地区も今年の様なひどい被害を受けなかったのではと思われます。

 

玉葱のベト病は進化しているが、耐病性を持った品種はない!
 そして、薬も効かなくなりつつある!
これも先日、ブログで書きました。ホウレン草(や、レタスなど)では盛んにベト病の耐病性因子を持った品種からその遺伝子を交配によって導入しR7、R8、・・・・R10など次々にベト病に強い品種が作られており、逆に古い品種は全く使われなくなってきました。
これはベト病菌も生き残るためにホウレン草を餌にして生き残りをかけた闘いを続けざるを得ず、次々に変異して進化のスピードが早くなってしまったのです。そしてついには薬が効かぬベト病菌さえも発生しているのが現状なのです。
玉葱の場合、このようなベト病の進化に全くついて行けていません。ベト病のレースの解析も十分ではないとタキイの技術担当者も正直に告白しておりました。現在のところ、品種の力=耐病性に頼ることはできないのが現状なのです。
残念ながら、ベト病予防についての結論は前項の耕種的対策以外になさそうです。
やっと後半です(^_^)!

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早生は腐りやすく吊り玉貯蔵には向かない!
 晩生は腐りにくく長く保存できて長期間食べることができる!
という風に思っていらっしゃる方がとても多いのに驚きます。
同じ品種でも、大きい玉葱は腐りやすい。小さい玉葱は腐りにくく保存が利く

②収穫時期になっても首が折れてない玉葱を、梅雨が近づいたのであわてて掘り上げたら腐りやすい
同じ品種でも、首が絞まった玉葱は腐りにくい

 

これが正解です。

 

もちろん、同じような栽培条件下で早生の品種に青切りしかできない吊り玉貯蔵できない品種が多いのは事実です。しかし、早生であっても半年腐らない様にできる品種もあります。
逆に、晩生の品種は貯蔵に向く品種が多いのも事実ですが、①や②の反例が示す様に、晩生系を使えば自動的に長く保存できると考えるのは誤りです。
言い換えれば 「貯蔵性」=「晩生」ではないのです
それじゃ・・・何だ!?と言う声が聞こえてきそうですね(^_^)?
玉葱の腐敗は外側から腐れる外部腐敗と、玉葱の真ん中から腐れる内部腐敗があり原因は全く別だと考えられます。
外部腐敗はバイ菌が表皮に付着して増殖したものです。清潔な場所で乾燥し乾燥保存することが必要条件であることはもちろんですが、収穫適期が遅れ免疫力が低下した状態になっても畑に長く放置状態の玉葱は特にこの腐敗が深刻になります。
重要なのは内部腐敗の方です。キーワードは「休眠」です。
早生でも深い休眠に入った玉葱は腐りません。晩生でも浅い休眠しか得られないのであればすぐ内部腐敗をおこします。

 

原因は、

 

A:追肥のタイミングが遅れて、収穫時期になっても肥料がガンガン残って玉葱に太れ太れ!と急かしている場合。当然、玉葱は生き続けようとしますので眠りに入ろうとは考えません。300gを大きく超える大きい玉葱は普通は保存には向かないのです。

B:肥料が効きすぎてなくとも、株間が広すぎると、一株あたりの栄養が過剰になるのでAと同じ事が起きます。
C:先ほどのベト病などに罹病してしまうと肥料の消化器官たる葉っぱが機能しなくなるので当然肥料が残る結果となります。最終的にはAと同じように眠れなくなります。

D:マルチ栽培で露地栽培と同じような施肥量で玉葱を作ると、マルチ栽培は失敗します。雨が通らぬので流出する肥料分が少なくなるからです。同じく最終的にはAと同じように眠りに入れません。

 

このように栄養過剰が休眠を阻害すると考えるのが合理的だと思います。

 

もし、吸収養分が減ってくると、強いストレスを感じると考えられます。生き残るために、休眠し、できるだけ保存養分を浪費しない生理状態に調節します。植物ながら偉いものです!
もし過保護に育った玉葱だったら、必要な養分は誰かがくれるだろうとタカをくくり、眠らずに生き続けようとします。吊り玉状態では自分で自分自身の保存養分を食い尽くすことになるので、結果的に老廃物が溜まり芯のところから腐り出します。

 

だから、収穫間際になると「肥料が切れる」というストレスサインが玉葱の休眠には是非とも必要になるのです。この「良い」ストレスの刺激を受けないと玉葱の長期保存はできない!と断言できます。
まん丸玉葱の首のところが折れ始めると肥料が切れだしたサインです。首が太くて丈夫だとまだ眠りに入ろうとはしてません。強制的に首を折っても休眠SWは切り替わりません。自発的に切り替わってくれないとダメです。さらに貯蔵に適した大きさは250g以下のやや小さめな玉葱が良いと思います。

 

繰り返しますが、「晩生系あるいは中生系の長期貯蔵に向くと謳ってある品種」を栽培すれば「自動的に」長く腐らずに吊りタマできると考えるは間違いです。
あるいは、甲高系の早生玉葱であれば、上手く栽培すれば早生系でも夏までは十分腐らせることなく吊り玉貯蔵はできます!
当店扱いの早生系では、アップ1号や2号などは3~4月にとれて9月くらいまで吊り玉できますので結果的に半年貯蔵できることになります。
さて、6月にとれた晩生系が12月まで吊り玉できたとしても同じ半年です。結果的には同じ期間だけ貯蔵できるのです。早生が早くとれるだけメリットは多く、晩生系は一般に早生より硬くて渋み?が強いです。
味では当店のスーパーアップや立春のかほりが最高なんです。

 

実はこのブログ私と同じK.I.様からのメールがきっかけで書いてます。K.I.様ご覧になってます?(^_^)

※冒頭の玉ねぎのべと病の写真は「タキイ種苗・野菜病害の診断技術」より引用いたしました。

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