野菜の生長に制約を与える原因について

平成29年。年末の野菜の異常な高騰は台風や豪雨による影響であったことはご存知の通りです。明らかに野菜の収穫量が減少し需要に比べ供給が不足したことが原因です。例年と同じように栽培し同じように愛情を注いでもなぜ野菜の生育に差が出てくるのでしょうか。今回は悪天候以外で野菜の生長に制約を与える原因について一寸考えてみました。

◆生長の階段とストレス
乳児期には無条件の母親の愛情が、小児期には母子分離のハードルが、中学時代には自我の確立が人間の正常な生長には欠かせません。人生の特定の時期に必要な階段を一段ずつ上りながら大きくなることが不可欠です(エリクソンの発達段階仮説)。過去に遡って修正できたり自動的かつ直線的に大きくなるわけでは無いことは人も植物も同じです。また人に差があるように野菜もマニュアルに従いカレンダー通りに育てても毎年同じように成功するわけではないのも現実です。

要求されるのは起因となるストレスを未然に察知する観察力です。 太らないからといって過剰な追肥をしてもあまり有効ではなく、温度が足りないからといって慌ててトンネルをかけても間に合いません。環境の変動に柔軟に対応できる栽培手法がとても重要です。

●チッソは体の肥大にあわせて漸次、一方リン酸は元肥で全部与えます。
●カリは冬季の光合成促進(玉葱・馬鈴薯・イチゴなど)や窒素をあまり必要としないような野菜たち(甘藷や馬鈴薯)にはやや多めが良いです。
●防草のために冬季はマルチが多用されますが、雨水の侵入がなく肥料が流出しないため露地の半分~2/3位の施肥に止める必要があります。

 

野菜の個性は様々です
●蕪や20日大根は乾燥すると形が長めに変形します。

●大根はやや乾燥⇒保水が必要で、そうでない場合は短く不揃いで味が悪くなります。
● 人参は保水⇒やや乾燥が良く、そうでない場合は短く色が悪くなります。
●玉葱は冬季のストレス(日照不足・栄養不良・過湿過乾)が分球の原因となります。

一方、果菜類や色・味・香が要求される葉根菜類は、それぞれ、花芽分化・色素生成・糖度向上などのため適度のストレスが必要となりますのでご留意ください。

 

低温
10℃以下の低温は野菜の生長を抑制し寒害を与えるだけではありません。
春を告げる重要な信号でもあります。多くの葉根菜に対しては花が咲くように生長のSW(スイッチ)を切り替えてしまいます。一旦SWが入ると、どのように愛情を注いでも花に養分が集中し茎葉の肥大はしなくなります。

11月後半から2月までは、大根・白菜・蕪・水菜・小松菜などアブラナ科野菜たちは休眠期に入ります。9(~10)月蒔きはほぼ肥大が完了しているので影響は出ませんがそれ以降の露地栽培は原理的に不安定になります。
安心して栽培が再開できるのは桜の開花~落花以降となります。

 

以上は、平成30年度、市川種苗店からお客様宛に書きました年賀状より抜粋いたしました。