ブログのコメント欄にご質問がありましたが、返信欄では書ききれない分量になりそうです。 また、少々敷衍して考えてみることで皆様のお役にも立てるのではないかと思い詳しく書いてみました。
>今日は。ポットで苗を育てるべきかどうかの記事を読み、こちらのサイトの読者にしていただきました。colnago89と申します。(中略)
>ベランダで、菜園を始めました。枝豆を作って、ビールを飲もうと育てていましたが、なかなか実が大きくならず、枝ぶりも細い感じです。葉っぱにもなんか斑点模様が出ているのですが、これは病気でしょうか?日照状況が悪いのでしょうか?このコメント欄では、映像をアップできないため、自分のサイトに画像をアップさせていただきました。
>ぜひ、アドバイスをいただけないでしょうか?お手数をおかけして恐縮ですが、相談できるれる方もいないため、ぜひ、よろしくお願いします
●枝豆育てるための必要条件~培地と日照量
こちらの耕種基準をご覧ください。栽培のスタートはこの表から始まります。枝豆の欄によると一反=300坪の畑に枝豆は6000~7000株くらい栽培できますよ・・・と読み取れます。これより多いと一株当たりの収量が減り、少ないと一株当たりの収量が増えても効率が悪くなりますよという目安です。この数字を無視して多く栽培しようと思っても失敗する確率が高いという経験値です。後で述べますが枝豆=大豆は太陽光線が必須なので栽植密度は非常に重要な要因です。
もう少しわかりやすい数字にします。
一反=300坪=300×3.3㎡=1000㎡
1000㎡=1000×100cm×100cm=10,000,0000?に6000本の枝豆が育つわけですから、一株当たりの面積を計算してみると
10000000÷6000=1666?=40.8cm×40.8cm(*1)です。
畑で根を下ろす深さはどのくらいかというと少なくとも25cm位でしょう。
すると、一株当たりの必要とする土の体積は(*1)より
1666?×25cm=41,650?=41L(*2)ということになります。
(*1)と(*2)より導き出される結論は、約40cm四方の太陽光線を独り占めにし、しかも約41Lの土に根を張ってやっと一株の枝豆ができるということを示しています。
ここでリンクされた写真を見てください。
具体的に計算してみて導き出された客観的なデーターから明らかに実を稔らせるには土の量が不足しています。またご自身も分かっておられるようですが、日照量も上の計算から絶対的に不足していることが分かります。
●枝豆は大豆です~根粒菌
短日に影響を受け、播種期が夏で、開花期が短日にならないといけないのが普通の大豆=秋大豆でして、日長に影響を受けないやや低温性の春大豆を若どりしたものをエダマメと呼んでいます。秋大豆でも若どりすれば秋に「枝豆」として出荷するのは何の問題もありません。(若干間延びした枝豆になりますが・・・笑)
ダイズとエダマメは別物と思っていらっしゃる方が多いですが種(しゅ)としては同じです。だから枝豆を作るときの基本は日長以外は大豆を基本としなければいけません。
さて、大豆は根粒菌というものが根の近くに繁殖します。そして肥料=主に窒素分を大量に大豆に供給してくれます。その窒素分は必要量の半分くらいだといわれています。残りは畑の場合前作の残り肥料で充分だといわれていますが、開花着果後に追肥する程度で十分な量が確保できます。つまり、大豆は肥料が不足して失敗するより多すぎて失敗することが多いです。
佐世保では「大豆小豆は畔に蒔け」と言い伝えられていて、多肥栽培を戒められておりました。畔は通路で肥料分が少ない所という意味です。
今回の場合、肥料がうんぬん・・・ということはないとおもいます。
●日照が致命的
前にブログにも書きましたので、詳しくはそちらをご覧ください。
要約すると、植物体の有機物の92%は水、酸素、炭酸ガスからできています。残り8%を土壌から吸収する肥料分などで補います。たったの8%に過ぎないことに大注目してください。しかも大豆は根粒菌のおかげで他の野菜のようにあくせく肥料分を土から吸収しなくてもよいのです。
では何が必要なのか?
この92%の空気や水から有機物を生成するための光合成エネルギーです。そしてこれこそ太陽エネルギー=日照時間あるいは日照量といってもよいでしょう。
太陽を遮るものが存在しない普通の畑では日照量より日照時間が重要なファクターとなります。(なぜなら、光合成は非常に効率が悪いので、光を受ける時間の長さの総和が影響を支配するからです)
しかし今回は写真を見てみますと、そのどちらもまるで必要条件を満たしてはいないようです。農業は水温度空気そして光が最低条件であることを肝に銘じておくべきかと存じます。
●温度~付け足しです。
エダマメの生育適温は25℃くらいまでです。30℃に近くなるに従いストレスを受けます。コンクリートのゆか、コンクリートの壁の近くは最悪なのではないでしょうか?
●病気でしょうか?~付けたし2
エネルギー保存則によると
E1:吸収エネルギー=E2:果実の肥大エネルギー + E3:茎葉根の維持エネルギー
が成り立ちます。
今回はE1が少ないため、E2、E3がそれぞれ賄えていません。とくに果実ができる時期になるとE3を減らしてでもE2にエネルギーを分配しようとする力が果菜類には働きます。するとE3が不足してくるのは当然のことです。E3が不足すると茎葉の免疫力が低下します。こうなると健全な生育は望めません。
今回は病気というよりそれ以前の問題のような気がします。
※みかんコンテナ(スカスカが良い。土が漏れるようだったら布や寒冷紗を内部に張っておきます。)に土をたっぷり入れて、二本立ちで二株くらい植え(移植は不可。必ず直播)、朝日から夕陽まで当たる場所に置きます。 そして風通しがよくコンクリートなどからは離し極端に温度が上がらないようにしたらよく育つでしょう。