あらゆる堆肥・有機肥料は(タンパク質様窒素)PEONへ変化する!

暑中お見舞い申し上げます

 

このブログをお読みいただいている皆様にお見舞い申し上げたく書かせていただきました。
古くからのお客様に実際に差し上げている「暑中見舞ハガキ」と同じ文面です。一部は残暑見舞いでお出ししなければなりませんでした。どうも老いとともに作業能率が急降下しているようで誠に申し訳ございません。今後ともよろしくお願い申し上げます。


暑中お見舞い申し上げます。      平成29年8月

旧暦によると五月と六月の間に閏五月があり今年は五月が二回ありました。梅雨であるべき六月がほんとの水無月になってしまいました。おかげでキュウリは大豊作!でも人間は熱中症!北朝鮮も気になりますが今後がとても心配です。 くれぐれも、お体ご自愛くださいませ。

さて盆のお釈迦様の啓示によるものか、「なぜ草木は自然に育つのに野菜は肥料をやらないと育たないのか?」初歩的な問いをたてました。

お米は一反作ると多くて500Kgの玄米ができます。ジャガイモは3000Kg、玉葱は5000Kgくらいですが、茎葉根を全部含めるとその倍程度の有機物が土から生じたことになります。草はどうでしょうか? 空中窒素を肥料にできるレンゲソウで1000Kg位です。野菜に比べ1/10位だと考えても妥当でしょう。草木は生物自身や排せつ物が分解した肥料分だけで生きていけます。しかし野菜は自然の循環有機物以上の収穫物を求められているので不足分はどうしても肥料で補う必要があります。草木はエネルギー収支がとれているのに、野菜は収入より常に支出が上回る日本の国家予算と同じだからです。

しかし、収入の不足分の全量ではなく、二酸化炭素と水と光エネルギー分を引いた約1/10程度を補えばよいことを前回書きました。今回はそれさえ不要にする特殊能力を持った例外野菜のお話です。

◆青梗菜、小松菜、白菜などアブラナ科の冬野菜やニンジン、ほうれん草などは普通は吸えないようなPEONという有機物を肥料にできることが分かってきました。PEONは堆肥などの有機物から自然に生まれます。実は寒さに耐えるために身近にあった有機物を餌にできるように進化したのです。でも麦やトウモロコシや夏の果菜類などはこの機能がないようです。PEONが使えると肥料が少なくて済みます。過剰施肥による硝酸害を減らせます。味もよくなります。一般に冬野菜には種まきや植え付けの1か月前の堆肥がとても有効です。そして元肥を減らし不足分だけを追肥で補うようにするとよいでしょう。

◆落花生は荒地の不溶性リン酸を、稲は土粒子の内部の不溶性カリを吸収することができます。落花生の後作はリン酸肥料が、ワラをすきこんだ田んぼの裏作ではカリ分が無から湧き出てくるのです。人気が無くなりつつある作物を別の視点から見直し前作に利用すると上手な輪作の体系ができることになります。(阿江教治教授より示唆を受けました)

※残暑が続きそうです。野菜作りは水やり次第。苗は徒長させないために朝一番、畑は水持ちをよくするために夕方の潅水が有効です。


今回は、土壌肥料学の権威でいらっしゃる阿江教治先生(農水省農業技術研究所を経て神戸大教授、その後退官)との偶然の出会いがきっかけとなりました。出会いといっても対等の意味は全くありません。一方的にしかも1時間半程度も個人教授をしていただいたのです。場所は福岡。タキイの資材会でのイベントの一環として、地元の有機JASに取り組んでいらっしゃる農業団体さんの土壌検査を依頼していたところ、阿江先生にその評価をしていただいたのですが、本題はそっちのけで盛り上がってしまったのです。実はその本題自体も実に興味深い内容でしたが、いつもどおりとても長いお話になりそうなので(爆笑)機会があれば書かせていただきます(^^)!。

盛り上がったテーマとは

有機肥料は無害で化学肥料は有害なのか?化学肥料は悪か?
「有機肥料と化学肥料の本質的な違いは何か?」
「肥料の吸収メカニズムは本当に解明できているのか?」
有機肥料なら美味しい野菜がてきると謂われているが本当か?
有機物はすべてが無機化されて植物に吸収されるのか?
「本やマニュアルにある肥料設計はほんとに正しいのか?」
「その肥料設計の根拠はどこから導き出されているのか?」
奇跡のリンゴは本当か?科学的説明は如何に?
「エネルギ保存の法則は農業でも成立しているのか?」

議論の詳細は、卒倒される方が大半だと思われる過激な内容ですのでご想像にお任せいたします(笑)。

 

 

「ご想像にお任せします・・・」ではあまりにも無責任と思われるので先生の本※の一節を引用しておきます。

●ボカシ肥料の効果は、PEONに反応する作物は期待できるが、その詳細は今後の研究に待ちたい。(ぼかし肥ではなく、無機肥料のみを吸収する野菜も多く、ぼかし肥料と化学肥料の本質的な差を明確に検出できない場合が多い)。またある梨園で堆肥などの有機質肥料や化学肥料と梨の生育には全く相関が見いだせなかったが、根が地中深く張っているか否かという根域との強い相関は見出すことができた。

●有機農産物が注目浴びており、アミノ酸、ビタミン、糖度などの成分など、作物の品質と有機物施用の関連は明らかではない。糖度については、浸透圧の関係から糖濃度が上がるのであるのであり、有機物施用と直接の関係はない。

また、先生自身で考えだされてたオリジナルなご指摘を数多くいただきましたが、特に初めて耳にする最新の情報を列挙してみます。
詳しくは※「作物はなぜ有機物・難溶解成分を吸収できるのか」などの先生の著作をお読みください。示唆に富むデータが満載です。数十年のご研究から得られた結論にはものすごい重みを感じます。もしご興味があられるようでしたら、わたくしのホームページのリンク集からYANMARのページへ飛んでみてください。阿江先生の最新理論の一部を感じ取ることができます。

 

 

以下、先生になり代わります。デスマス調を改めます(笑)。

◆有機肥料や堆肥は確かに有用である。しかし有機物として直接吸収されるメカニズムを持つ作物は限定的である。ほとんどが無機態養分(=化学肥料成分)を吸収している。しかも多種多様な有機態養分が存在するのではなく、PEONと呼ばれる分子量8000くらいのたんぱく質様有機物に収斂される。驚くべきは元の有機物はすべて微生物の餌となって消えてしまうこと。微生物の死骸から二次的に生み出されるのがPEONの実体である。PEONはアルミや鉄などの三荷の金属によりキレート化されて腐植が生まれる。可給態窒素とか有機態窒素の本質はこのPEONだと思われる。アミノ酸が吸収されているという論文もあるが、吸収量としては圧倒的に少ないことが分かている。粘土鉱物が持つマイナス電荷による保肥力とPEONの持つ潜在力が農地の肥沃度を保っているのである。

◆アルミニウム、鉄は養分を不溶性化し、せっかく施肥した肥料を効かなくする元凶のように言われているが全く違う。
不溶性というより難溶解化といった方が正しく、必要に応じて動的に溶け出したり取り込まれたりして流出を防ぎ潜在的な保肥力を高める重要な役割を担っている。特に日本では古くから栽培されている稲が土壌鉱物中のカリや珪酸を吸収する(しかも無尽蔵に!)余剰過程で鉄やアルミが大量に副産物として生み出されている。それが日本の豊饒な土壌の基礎となった。同じ自然界の有機物である落ち葉はダメ。つまり森林有機物では日本の農地を支えられないのである。

◆アフリカやインドなど、日本に比べると不毛な土地といっても過言ではない土地で栽培されている作物は当然のごとく無肥料。
なぜ無肥料でいいのか。根を10m以上も深く張ったり、動物や微生物や他の植物との共生関係を作ったり、普通なら不可能な養分を吸収可能にする特殊な能力を持つように長い時間をかけて進化したからである。
本文中で引用した落花生や冬野菜のアブラナ科はその典型である。