スーパーアップ・加津佐13号 の第二報
~極早生玉葱の最良の栄養は日照時間である!
前回2月7日、長崎県加津佐町における現地検討会のレポートに続き、その後分かってきた情報をまとめてみたいと思います。
当店でおすすめしている、現在のところ日本で一番早い極早生系玉葱であるスーパーアップと加津佐13号に関して、前回「今年の低温のせいか、両者の生育にあまり差は見られなかった」と書いておりましたが、訂正いたします。
◆「低温下においても加津佐13号の方がスーパーアップより収穫が早くなる」事実が判明いたしました。
加津佐13号は一斉収穫が可能でした。一方、スーパーアップは抜き取り収穫しないと大きさが揃えられない・・・つまり、一見同じような茎葉の肥大の仕方に見えましたが、地下部の肥大は加津佐13号の方が進んでいたという新事実の発見がありました。
まあ、10日や2週間も生育が進んでいるというわけでは無いのですが、低温が続く悪条件の中でもちゃんと早生性が確認できたことは大きな収穫となりました。
さて、本題に入ります(笑)
今までにお客様から寄せられた情報をまとめてみますと、
◆低温により生育遅延が明らかに認められました。順調に生育していても例年より半月くらい(推定)は遅れているようです。
※グラフから極早生玉葱が最も肥大すべき10月下旬~11月~12月初旬の平均気温は過去三年で最も低く、あの2015年より低いです。従って積算温度の点では非常に不利であり、生育遅延の原因になったものと思われます。
◆育苗期に台風(18、21号)の影響を大きく受けた方とそうでない方の差が大きい!
◆定植期の10月の中下旬に襲来した超大型台風21号により、影響を受けた方とそうでない方の差が大きい!(活着の良否がその後に大きく影響を与えたようです)
※上記の平均気温のグラフからは播種後定植までの9月~10月中旬の温度は平均並みです。ですから悪影響は直接的には21号台風の風水害によってもたらされたと推測できそうです。苗が痛んだり、飛ばされたり、定植の活着が遅れた場合は極端な肥大不足や、分球の報告もありました。
※佐世保における過去三年の平均日照時間の推移です(気象庁)
一方、悪影響をそれほど受けなかった場合は、生育の最も大切な時にストレスを受けずに済んだので分球などは発生していないようです。 10月下旬から11月いっぱいは過去三年で最も日照時間が長かったため、今までの生育遅延を一気に取り戻せました。ですから11月以降1月まで平均気温は過去三年で最低だったのですが、2015年のような最悪の事態にならずに済んだともいえるようです。ただ日照時間については今年は12月が極端に悪くなり、1月は回復したものの昨年ほどはないので、先に述べた台風の時期の生育遅れを取り戻せなかった方ににとっては非常に厳しい年であったといえるでしょう。
◆大根、白菜など、9-10月が生育の最盛期の野菜は軒並み台風などの悪天候の影響を受けました。そして異常ともいえる高値が続きました。しかし、極早生系玉葱の場合、最も重要な時期は定植直後から12月初旬であり、体感的には非常に寒い日が続いたように思えるのですが、あの大雪の2015年ほどの致命的な肥大不良や分球の発生はあまり見られないのも事実です。ほとんどのスーパーアップや加津佐13号のお客様からは2~3月、「いい玉葱が収穫できています」との声が届いています。
つまり、玉葱はそもそも低温性の野菜でありそこそこの低温が続いてもエネルギーの源である太陽光線が十分であれば活発な光合成により11月~2月期の肥大が担保できるというのが極早生玉葱の生育原理であることは間違いないようです。
※上記の二つのグラフは、公開されている気象庁のデータの中で佐世保地域の過去三年分をEXCELにて処理したものです。
《3/20追加》
上記は超極早生~極早生系の玉葱についての考察です。中晩生系のいわゆる貯蔵系玉葱は通常11月中旬に定植しますが、定植から2月頃までは地下部は別として地上部の茎葉の生長は一時停止し休眠状態になります。ですから条件が良い年なら2月に定植しても11月定植の苗と遜色ない玉葱が収穫できます。しかし、上記に述べた極早生系と全く異なる生育原理に留意しなければなりません。
◆中晩生系はこの休眠期には、ある一定以上の肥大をしてはいけない・・・つまり、大苗で冬を越すと必ず抽苔することに最大の注意を払わなければいけません。
極早生系は全く違います。極早生系は低温により花芽はつきますが、低温下で休眠せず肥大できるのでこの花芽が肥大し抽苔する前に根部が肥大してしまえば全く実害がないからです。
したがって極早生系は早く蒔き、年内に十分な葉数を確保できるほど良品の収穫につながりますが、中晩生系は早蒔きや早期肥大は絶対にダメです。この点を再度ご確認ください。
よくある間違いは早春から肥大したり、浅い休眠がある早生系の品種も、極早生系玉葱とは生育原理は全く異なり、中晩生に準じた播種期や初期成育を守らねばならぬということです。有名どころでは「ソニック」などでしょう。
◆中晩生系の最大の目的は、貯蔵することです。しかし極早生系は青切り出荷が主目的ですから、貯蔵性を第一としません。そしてこの貯蔵性は収穫後の玉葱の休眠状態に大きく依存します。
以前にも繰り返し書きましたので長くは述べませんが、中晩生系は肥大が悪いといって3月以降追肥などをやりすぎたりすると、収穫時の5月に窒素が残っている状態になり休眠に入れません。首が締まらず、葉の倒伏もない状態で収穫した玉葱は、どんなに整った貯蔵施設があっても長くはもたずすぐ腐れてしまいます。
生育原理が全く違う極早生系玉葱と、貯蔵目的の中晩生系玉葱は別物であるという認識が必要である!と痛感しています。