+マルチ栽培の効果についての現状と考察
2017年秋作より、従来のスーパーアップより2週間程度早く収穫できるスーパーアップ改良種「スーパーアップ13号」を一部限定的に販売開始いたします。
2017/2/6 スーパーアップ13号 南島原市(by アカヲ専務)
葉がコンパクトでスーパーアップより首締まりが良く早く球が出来上がるのがわかりました!
長崎県の南部、島原半島にてかなり前から試験栽培を繰り返し目標の成績を出せることが確認でき、採種量も安定してきました。
ただし、2017年現在十分な種が取れませんので、ネット及び店頭では直接の販売はできないかもしれませんが、当店でスーパーアップをある程度ご購入いただいているお客様にはすでにご案内しておりますのでご希望の方はご予約下さいませ。(販売上限がありますのでご希望量全てを13号で賄うことはできません。あくまでスーパーアップの一部を試験的にお試しいただきたいと考えております)
2017/2/6 スーパーアップ13号 南島原市(by アカヲ専務)
2017/2/6 スーパーアップ 南島原市(by アカヲ専務)
13号とスーパーアップを比べると、葉の勢いや葉色の違いがわかります
さて、本題です。
スーパーアップ13号はどんな品種なのか!(スーパーアップについてはこちらへ)
◆スーパーアップより1週間~2週間早く収穫できます。長崎県で8月下旬~9月上旬蒔きでスーパーアップは2月くらいから収穫できますが、同時期にスーパーアップと比較しての1~2週間の早生性が最大の特長となります。
◆(2015年2月の成分検査の結果)ビタミンCが通常の早生系品種より2.3倍(これはスーパーアップも同じ値でした)、また抗酸化力は3倍以上高く、機能性の点で特異的に優れていて、上梓されている品種では最高の値を示します。糖度はほかの品種と同程度の7程度で、若干辛みを感じるのですが、これは硫化アリルやケルセチンなどのポリフェノールが多く含まれるせいで、先に述べた抗酸化力が異常に高い値を示すことと強く相関しているので一概に弱点とは言えません。ただし、加熱調理をいたしますとこの辛み成分は消失し旨味成分に変化することを付け加えておきます。
以上が明らかにスーパーアップより優れている点です。一方、生育上かなり異なった傾向を示しますので栽培の上でその早生性を引き出すためには留意すべき点があります。
◆スーパーアップは本葉11枚~13枚位で収穫適期に達します。一方スーパーアップ13号はわずか8~9枚です。写真より実物を見て比較してみれば一目瞭然なのですが、スーパーアップの方が葉色は濃く葉の展開も旺盛です。それに比べると13号はやや色が薄く、葉数、葉の大きさどちらも小さめです。
つまり、光合成エネルギーや土壌吸収エネルギーが葉を形成する栄養成長から結球部(=いわゆる「球根部}を)肥大させる生殖成長へと転換する時期が”早く”なるように改良されているということです。
したがってスーパーアップ栽培の留意点の違いをあげると
①吸肥力はスーパーアップが強く、13号が穏やか目です。葉色や葉の勢いを見て追肥を急ぎすぎたり過剰施肥をすると、早生性が強調され扁平になりやすく、表皮の裂皮も起こしやすくなります。
②スーパーアップは13号よりじっくり肥大するイメージなので、在圃するほど大きくなりますが、13号は早めに生育が完了するので適期収穫が望ましいと思います。同様な性質から、スーパーアップは首が太いですが、13号は適肥で栽培した場合は首が良く締まり秀品率が上がります。
③早生性より大玉や収量性を最優先する場合はスーパーアップが良いと思います。一方、収穫期の前進、首締まりなどの秀品率、味や機能性を最優先とする場合は13号の方が優れているかと思います。
④2015年/秋~2016年/早春の作型のように、異常低温、少日照など、天候不良環境では馬力に勝るスーパーアップが安全でしょう。一方、平準な天候で、長崎、佐賀、熊本など特に沿岸部の温暖な地域ほど13号の早生性を安定的に引き出せるものと考えられます。
つまり、緯度や高度が高くなるに従い、13号の早生性は抑制気味になりますので、栽培地域は温暖な地域ほど13号に有利で寒冷地ほどスーパーアップが向いている気がします。
以上、育種元のアカヲ種苗の専務様からのお話を引用しながら書かせていただきました。写真の掲載を含め専務様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
掲載の写真のマルチの色が赤色なのにご注目ください!
2/6 スーパーアップ13号の栽培圃場 南島原市(by アカヲ専務)
透明度が高いほど、熱エネルギーの源である赤外線をよく透過するので促成効果が高まります。一方雑草抑制効果は透過率が最小の黒色が優れています。この中間にカラフルな色マルチが入りますが、当然高価になり、費用対効果の点から頭を悩ませているのが早生玉葱栽培の現状です。
結論を端折って述べるとすれば暖かいほど有色マルチの効果が上がり、逆に寒くなるに従い黒マルチとの差がなくなるというところに落ち着くみたいです。
当地のことをよくご存じのアカヲ種苗の専務様にお尋ねしましたところ、以下のようなメールをいただきましたのでそのまま引用させていただきます。
(以下アカヲ種苗専務様のメールより引用いたしました)
暖地では、
肥大性が【(早い)透明 > 赤 > 黒(遅い)】の順になります。
球形状は【(扁平)透明 > 赤 > 黒(甲高)】になります。
透明(1月出荷用)、赤(2月出荷用)、黒(3月出荷用)※と使い分けされているようです。
※注意:透明が黒より2か月、赤が黒より1か月の促成効果があると言っているのではありません。それぞれ、1~2週間程度ですので、暖地の場合、露地より黒マルチが約半月促成、白が約1か月促成、赤はその中間という程度ではないかと思います。
収穫時期から逆算して苗の定植時期を変えたり、マルチの色を変えたりして収穫時期が重なるのを防いでいます。
一時期、※南島原では上記以外にも緑や灰色、薄茶のマルチを使っていましたが、現在は主に上記3種類に落ち着いたようです。
中間地では暖地よりも収穫適期が短いため、赤マルチでは黒マルチとほとんど違いが出ません。
佐賀県の※太良地区でも赤マルチで栽培されていた方がいましたが、南島原ほどのメリットがないとの事で、畝肩部分が黒い透明マルチと黒マルチだけになっています。
赤マルチはコストも割高になりますし。
昨年、佐賀の※白石地区を視察した際には露地で透明や黒はもちろんのこと、赤や緑のマルチも使われているのを見ました。
大面積になるとわずかな差が重要になってくるのかもしれません。
白石では、極早生は透明マルチが大半だったように思います。
※地理的条件は主観ですが(笑)暖かい順番に南島原>太良地区>白石地区だと思います。