~気象デーからみた分析
(播種期の高温や、育苗期の多雨のため大変なご苦労があったようで、ややスタートが遅れているようですが)、昨年2015/秋-2016/早春の状況に比べれば比較的順調に生育しているようです。(スーパーアップについての詳細はこちらへ)
今回、育種元/アカヲ種苗の専務様の南島原市における生育状況視察の様子をレポートさせていただきます。(皆様のお役に立てればとのこと、専務様より写真及びデータの快諾を得ております。)
なお、近日中に、スーパーアップの改良型新品種スーパーアップ13号の栽培結果及びマルチの効果について、ご報告したいとデータを整理中です。乞うご期待!
2017/2/6 スーパーアップ 南島原市(by アカヲ専務)
2017/2/6 スーパーアップ圃場 南島原市(by アカヲ専務)
平均気温/南島原市 (by アカヲ専務)
最高気温/南島原市 (by アカヲ専務)
最低気温/南島原市 (by アカヲ専務)
【気温の考察】
定植後~年内は例年よりも平均気温がやや高く、最低気温を見ても年内は前年並で冷え込みが少なかった。1月に最低気温が下がったが、前年のような極端な冷え込みではない。また、最高気温が高い事から、寒暖の差が激しかった事が分かる。(by アカヲ専務)
日照時間/南島原市
降水量/南島原市
【日照・降水量の考察】
播種~苗定植までは日照が少なく雨が多かった。
11月頃からは例年よりも日照が多く雨が少ない。(by アカヲ専務)
【今後の生育予想】
今後の肥大期には、もう少し降水が欲しいところ。気温は例年よりも少し高めで推移しているが、雨が少ないため生育が抑えられている。寒暖の差があった事で首締りが良くなり、秀品率も上がると期待出来る。雨が少なかった事で病害虫の発生も少ないのではと推測される。2月下旬~3月には気温の上昇とともに急激に肥大が進むと予想される。その際、1月の時点で苗が大きかったものは高温ストレスによる分球、低温ストレスによるトウ立ちの心配があるため、早めの収穫が望ましい。ただし、データからは前年のような極端なトウ立ちや分球の発生はないと予想される。(by アカヲ専務)
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さて、以下は、スーパーアップに限らず、玉葱栽培一般において、気象データをいかに読み、予測し、対処すべきか、昨年の2015/秋~2016/早春期の玉葱がなぜ記録的な不作になったかを佐世保のデータから考えてみました。
まずは、佐世保における平均、最高、最低の2010年以降7年間の月別推移表をご覧ください。
ご覧の通り、2010年より7年間、温度の月別変化は8月を最大値、1月を最低値としてほぼ同じような変化をしています。誤差幅2.5℃くらいにきれいに収まっています。平均としての偏差はこの半分くらいですから、±1.25℃です。もちろん、月別の平均ですから、一日一日の変動は大きかったと思いますが、月平均で見ると温度要因からはその年の天候の特徴はなかなかつかみにくいことがわかります。あれだけ玉葱が不作だった2015/秋~2016/春も温度変化からは例年とさほど変わりがなかったのだということがわかり、とても意外です。
一方、月別の降水量と日照時間をみると、温度変化とは異なり、年度により著しい違いが分かります。日照時間が長いことは太陽エネルギーの受容量が大きかったということで大きい値ほどプラスに働きます。しかし日照量自体の変化は次のグラフで(観測地点が限られているようで最も近い福岡の例です)見るように年度別の変化は気温と同じように小さいことがわかります。つまり、日照「時間」の値が日照「量」自体の値より変動が大きいこと。そして野菜の成長に大きく影響を与えていそうなのはこの日照「時間」の値らしいこと!
(調べてみたところ、太陽光線のエネルギーが完璧に高効率で成長エネルギーに変換されるのではなく、(かなり効率が悪いので、)そこそこの日照量があれば、時間をかけさえすれば光合成エネルギーを生成できる!!というのがその理由みたいです(驚))
降水量はプラスにもマイナスにも作用します。多すぎる雨は当然日照を少なくし、病気を発生しやすく、成長阻害要因となります。しかし、肥大期にはある程度の水分がないとこれも負方向に働きます。平均的な変動が望ましいです。
玉葱の生育時期と考えられる10月~3月までは平均的に150㎜/月以下です。年度別の変動値はそれほどひどく異なってはいません。ただし、4-5月の降水量が、2016年は著しく高く、250㎜近くの最高値が連続していることがわかります。これが昨年の中晩生系玉葱の大不作の要因の一つであることは間違いないと思います。しかし、極早生、早生系の分球やトウ立ちの多さの原因は別のところにあるようです。
降水量、日照時間のグラフを何度も何度も見ましたが、先の3-4月の降水量のようにこれだ!という特徴的な部分が見つからないので、ひと工夫してみました(上図)。
(日照時間)×(1±7年間の平均気温からの偏差評価)の値を出してエクセルでグラフ化してみました。すると、玉葱が最悪だった2015/秋~2016/春の11-12-1月が圧倒的な最悪値、2-3月はほぼ平均並みに戻ったのに、4月がさらに最悪値、5月が過二番目の悪い値。ということがわかりました。
2015年の10月は過去最高を記録していますが、玉葱の定植時期はほぼ10月下旬から11月ですからあまり影響はないと考えます。ちなみに、その前年度は10月-1月がほぼ最高でしたので極早生系にとっては最高の年でした。少ないデータですが以下のようにまとめることができそうです。
早生系は11月~1月の
【日照時間】は、多ければ多いほど、
【平均気温】は、例年並みかやや高い位、
【降水量】は、多すぎず少なすぎないほど、成績が良くなる傾向がある。
特に11月の条件が最もその後の成長を左右するように感じられます。
一方、中晩生系は3月から4月の
【日照時間】は、多ければ多いほど
【平均気温】は、例年並みかやや高い位、
【降水量】は、少ないほど、成績が良くなる傾向がある。
早生系と違い、11月~1月の天候の影響は小さく、逆に2-3月の天候に大きく左右されるように感じられます。
日照のコントロールは無理ですが、以上のような天候要因左右されることがわかっているので早めに対策を練ることが肝要かと考えております。
以上からすると、本年度のスーパーアップなどの極早生系はやや遅れ気味だけれど順調。中晩生系は今後3ー4月の天候次第というのは間違いなさそうです。
※なお、気象データはすべて気象庁のHPのデータ作成機能を利用してEXCELで作図したものです。
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